大学時代、知り合ったときから何か文章の写真を
眺めていた彼は、財宝発掘にすべてをささげていた。
古文書を解読し、伝承を聞き、あたりをつける。
そこからでも容易にはたどり着けない厳しい道。
でも、たまに手にする人がいるからやめられないと彼は言った。
そんな彼が夢を掴んだのは、わたしたちが結婚してから
二十年近くも経ったころ。
「見てくれよ」
差し出される預金通帳には、見た事がないほどの桁。
「ど、どうしたの、これ」
「あの財宝の結果さ」
得意げな笑顔。
「やったじゃない!」
「ああ。これでまた探索ができるぞ!」
「……え?」
思わず声が漏れる。
「ここに来るまでどれだけ苦労して、
どれだけ貧しい生活したと思ってるの?
もうお金も入ったんだし、堅実に暮らそう?」
すると、彼。
「なに言ってんだ。堅実に暮らせるなら、
はじめっから財宝探しなんぞやってるかっつぅの」