大学に入ると、周りは男子ばかりだった。
学部が法科ということにくわえ、付属校に中学・高校と
男子だけの単性校があるというのも大きいらしい。
コネで入った、カネで入った、入学テストはなくて
高校の成績順で好きな学部が選べた、
そんなのをはばかりなく言う面々に、コネもなければお金もなく、
それでも必死に勉強して入ったわたしは
惨めな気分を味わうだけの毎日。
他に女子がいればそんな気持ちを話し合えたのかもしれない。
でも教室の都合で小分けされた授業では
わたしの他は男子しかいなかった。
そんなある日。
授業が終わり教室を出たあとで忘れ物に気付いて引き返すと、
「あいつ、おかしいよな」
中から嫌な言葉が聞こえた。
「どいつ?」
「ほら――」
わたし?
人のノートを借りるくらいで自分では何もできない親頼みの
おぼっちゃん連中が、自分を棚にあげて他人を気違い呼ばわり?
つばでもはきかけたいくらいの気分で
教室に入ろうとした耳に、声。
「なんであんなにいいにおいするんだろ」