熊は死んで肉と皮を残すが、
人が死んで残せるものは名だけであると
父母やその父母たちからずっと聞かされてきた。
だからこそ偉大な先人たちの名は語り継いできたし、
自分の名前を汚さないように生きるようにしてきた。
名前はその人だけの大切なもの。
他人と同じ名前をつけることはその人の運を奪い、
運命を同じくしてしまうからとわたしたちは避けてきたんだ。
でもある日、テレビを見ていたら同胞でもない人間が
わたしたちの言葉を使って名宣った。
「ピリカです」
そしてまたある日、別の人間が
わたしたちの言葉を使って得意げに名宣った。
「ピリカです」