0984
2006-10-17
検査済み
 普通の会社員だったおれが社長から養子縁組のお誘いを受けた。
 やったぞ! 玉の輿とは多少違うが、
社長の娘さんは美人だって話だし、
うまくいけばお近づきになった上に
好意をもたれることだってあるかもしれない。
 そそくさと申し出を受け入れ、おれが社長の子となると、
社長はほっとした顔で言った。
「息子よ」
「なんです、社長……いえ、父さん」
「実はな。わたしは腎臓を患っていてね」
「それは大変ですね」
 さっそく幸運がめぐってきたぞ! 
遺産を継がせるために、社長はおれを養子にしたんだ!
 顔は殊勝を装いながら心で快哉を叫ぶと、
あたらしい父さんは深い目をおれに向けて、言った。
「移植用の腎臓を快く提供してくれるよな? 我が身内、息子よ」