難しい顔をしたおとうさんがおふろに入ったあと、
テーブルの上に置いたままの紙を見てみると――
「主任登用試験問題……?」
これに合格したら主任になるんだ!
わくわくと、写真の横の問題を読んでみる。
『普段24000で売っているこの商品を、
セールで46%引きで売ろうと思う。いくらになるか?』
その下もそんな問題ばっかり。
そこでわたしは問題の横に答えを書いておいた。
「ん、なんだこりゃ!」
おふろから出たおとうさんが声を上げる。
「ふふふふ。こんな問題もぱっとできないようじゃ、
もっと勉強しなきゃねえ」
そばに行くと、ちょっと困った顔。
「あ〜、だめだ、これじゃ」
振り向くと悲しい顔をした。
「え〜、うそだぁ。ちゃんと見た?」
「ああ」
「だって、最初の問題なんか、
24000の46%引きだったら、絶対12960だよ?」
「ところがだ。そんな値段で売ってたら儲けが出ないだろ?
他の店だと安くて19800くらいだから、
『46%引き!』ってチラシに書いて、
18900くらいで売るのが妥当だな。
でもうちだけ安く売って損するのも困るからそこを最低値として、
たぶん……19500くらいで売るのがいいんだろうな。
今はその、『くらい』をいくらにするかを悩んでたんだよ」
「え〜。それってなんかきたない……」
おとうさんはわたしの頭に手を置いて。
「物の価値もわからずにただ勉強しろと言ってくる客には、
それくらいのこともしなきゃいけないのさ」