1019
2006-11-01
 最近、いじめによる小学生・中学生の自殺が後を絶たない。
 亡くなったこどもは大々的に取り上げられるが、
そこで伝えられない、殺した方はどう思っているのだろう?
 そこでわたしは取材を開始した。
 関係者にたどり着くだけでも困難続きの中、
金を頼りになんとか同じクラスの女の子二人に
話を聞くことができた。
「君たちから見て、いじめみたいなのはあった?」
 わたしの言葉に、
「ふつーにみんな言ってたよね。
蛆虫とかゲロくせえとか死ねとか」
「うん、言ってた」
 わたしのおごり、高カロリーな食べ物をむさぼる二人が
気楽にうなづく。
「そういえば、いっぺんすごいのあったよね」
「ああ、あれ? 掃除する前の緑のプールに突き落としたやつ?」
「そうそう! ばかみたいにぶるぶる震えてんの!」
 そう言って大口を開けて笑い合った。
「それを見てどう思った?」
 訊ねるときょとんと顔を見合わせて。
「べつにー? あたしらがなんかしてるわけじゃないし」
「結構うけたけどね」

 なぜこんなことを平気で話せるんだ? 
まったくの他人事みたいじゃないか。
「そんなことされて、本人はどう思ったんだろうね」
「さあ? へらへら笑ってたけど」
 これが本当に同じクラスの子なのか?
「そういうのがつもりにつもって、
あの子は死んだんじゃないの?」
「知らない。死んだのもあたしらのせいじゃないしー」
「ねえ?」
 あまりに無責任な答えに押さえようとした怒りが
にじみ出てしまった。
「君たちはあの子がいじめで死んで、なにも思わないの?」
 すると彼女たちは、
「まさか〜、なんにも思わないわけないじゃん」
「だよね〜」
 ほっとするわたしの耳に、二人の言葉。
「すっきりした」