月が来た。赤い月。
痛い。怖い。気持ち悪い。
『もうこどもじゃないんだね』なんて。
今日のわたしは昨日のわたしとはもう別のものなの?
……嫌だ。
もう学校も行きたくないし、誰にも会いたくないのに。
朝になるとおかあさんに無理やり押し出された。
「おはよ〜」
「おはよ」
学校途中にいつもの友達。
「元気ない?」
心配そうに声をかけてくれる。
「ん〜」
いいのかな? 聞いても、平気かな?
「あ、あの……さ。あれって……もう、なった?」
「あれって?」
それからはっとして。
「あ、もしかして?」
「……うん」
「わあ、おめでとう!」
本当に嬉しそうにそう、言った。
「え? なんで?」
「うん?」
「だって、痛いなーとか、嫌だなーとかじゃないの?」
「うーん、それもあるけど。でも、わたしはそれよりも、
もっとすてきなことだと思うな」
そう言う顔には輝く笑顔。
ずっとかよわそうに見えてたのに、
わたしなんかよりよっぽど強かったんだ。
「すごいね」
わたしは思わずつぶやいた。
「え?」
「んーん」
そしてまた一月がたち、わたしに赤い月が来る。
でも今度は、なんだか前より平気みたい。