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2006-11-07
趣味と実益
 友達と飲んで終電を逃した彼女に呼ばれ、
おれは愛車を走らせた。
 そして駅前、タクシー乗り場から
すこし離れたところにいる彼女とその友達の前でドアを開ける。
「ごめんね、急に呼び出して。それと悪いんだけど……
友達も、送ってもらえる?」
「ああ、いいよ」
 助手席でシートベルトを締める彼女を確認して、
後ろの二人にも声をかける。
「おれの車に乗るからには、
後ろもシートベルトちゃんと締めてよ」
「あー、はーい」
 酔った声、適当な動きでベルトの金具を探す音。
「あれ? なにこれ。後ろって腰だけじゃないの? 
前みたいなベルトになってるー」
「趣味と実益を兼ねて、それを選んだんだ。
ベルトはゆるんでない? ちゃんと締めた?」
 振り返り、目視で確認。
「締めたよ、ほら」
「うーん、よし」
 車を動かすと、後ろから楽しそうに声が響いた。

「なんか見た目に似合わないね」
「うん? おれ?」
「ぜんぜんそう見えないのに、安全とかに結構気つかってるんだ」
「なんだ、心外だな」
 誇らしくおれは言う。
「安全なんかどうでもいい。おれはたすき掛けで強調される
胸の形が好きなだけだ」