友達と飲んで終電を逃した彼女に呼ばれ、
おれは愛車を走らせた。
そして駅前、タクシー乗り場から
すこし離れたところにいる彼女とその友達の前でドアを開ける。
「ごめんね、急に呼び出して。それと悪いんだけど……
友達も、送ってもらえる?」
「ああ、いいよ」
助手席でシートベルトを締める彼女を確認して、
後ろの二人にも声をかける。
「おれの車に乗るからには、
後ろもシートベルトちゃんと締めてよ」
「あー、はーい」
酔った声、適当な動きでベルトの金具を探す音。
「あれ? なにこれ。後ろって腰だけじゃないの?
前みたいなベルトになってるー」
「趣味と実益を兼ねて、それを選んだんだ。
ベルトはゆるんでない? ちゃんと締めた?」
振り返り、目視で確認。
「締めたよ、ほら」
「うーん、よし」
車を動かすと、後ろから楽しそうに声が響いた。
「なんか見た目に似合わないね」
「うん? おれ?」
「ぜんぜんそう見えないのに、安全とかに結構気つかってるんだ」
「なんだ、心外だな」
誇らしくおれは言う。
「安全なんかどうでもいい。おれはたすき掛けで強調される
胸の形が好きなだけだ」