空はとても青かった。
こんなに登ったのに、まだ手が届かないほど高かった。
　ぼくは満ち足りた気分でビルの上から遠くを見渡す。

　『わたしは嘘をつきません』。
彼はみんなに言った。

　『ぼくは隠し事などしやしない』。
あの人はその人に言った。

　『わたしたちは、いつもあなたを思ってる』。
親は子に言った。
「……すばらしき世界！」

　ぼくは叫ぶ。

　最高に幸せだった。
こんな世の中に生きていられることが
何より嬉しかった。
　見渡す限り、世界はどこもかしこも
平和と平等、真実と公正に溢れている。
人々は愛に満ち、お互いを高めあおうと尽くしている。
これ以上ないくらいすばらしい世界だ。

　……だから、ぼくは。

「ずっとこの世界で暮らしたい！」

　叫んでビルから飛び降りた。