0015
2003-07-23
こどもしんぶん
「なあ、今度の学級新聞、なに書く?」
 両足を机に乗せて、
放課後の教室で二人の男子が考えにふけっていた。

「なに書くって……なに書くんだよ。
おれに訊かれてもなあ」
「なんかないのか? 
こう、刺激的なやつ」
 訊かれた男子はため息を吐く。

「おれが知るわけないだろ。
なんならいっそ作っちまうか?」
「そりゃまずいだろ。……って、待てよ」
「なんだ、どうした?」
 彼は含みのある笑みを浮かべた。
「作らなきゃいいんだ。まかせろ!」
 次の日。二人は珍しく朝早く登校して、
教室に女子が入ってくるのを待っていた。

 そして一人目。
「よう! 今日は何色のパンツ履いてんの?」
 顔を見るなりかけられた声に、
その子は顔を赤くして自分の席に向かう。
だが彼らはしつこく訊ねた。
「なあなあ、何色のパンツ履いてんだよ」
 でもその子は答えられず、
恥かしそうにうつむくだけ。
「なんだ、無視かよ」

 彼らは見切りをつけて次の女子を待った。
そうしてつぎつぎに声をかけていき、
とうとう最後の女子に声をかける。
「よう! 今日はパンツ履いてるか?」

 ぱしぃいん!

 するどい平手が彼の頬に炸裂した。
「いってえな! なにすんだよ!」
 頬を押さえて叫ぶ。すると彼女は、
「なにって、あんたが
ばかなこと言ってるからでしょ!」
 そう言い捨てて、肩をいからせ立ち去った。

 その後、できあがった新聞の見出しには
こう書かれていた。

『あいさつを返せないこども急増! 
一人はいきなり暴力で返す』