わたしが公園のベンチに腰掛けていると、
そばでおままごとをしているこどもの声が耳に入った。
「ほら、さっさと起きて」
「なにだらだら着替えてるの。ノロマ」
「ほら、さっさと食べて早く仕事行ってよね」
母親役らしい一人はさっきからこんな調子だ。
父親役の子が追い出されると、
「ああ、ようやく家が広くなった。
あとはあんたがでかけたら、ようやく一息つけるわ」
嫌みったらしい声で言った。
だがすぐ子どもらしい声で、
「あ、ママ!」
顔を上げると、母親役のこどもの母親らしき女性。
「ママもおままごとする?」
こどもが訊ねると、
「ううん、帰ってするからいい」
冷たい笑顔でにやりと笑った。