0046
2005-12-08
おままごと
 わたしが公園のベンチに腰掛けていると、
そばでおままごとをしているこどもの声が耳に入った。
「ほら、さっさと起きて」
「なにだらだら着替えてるの。ノロマ」
「ほら、さっさと食べて早く仕事行ってよね」
 母親役らしい一人はさっきからこんな調子だ。

父親役の子が追い出されると、
「ああ、ようやく家が広くなった。
あとはあんたがでかけたら、ようやく一息つけるわ」
 嫌みったらしい声で言った。

 だがすぐ子どもらしい声で、
「あ、ママ!」
 顔を上げると、母親役のこどもの母親らしき女性。
「ママもおままごとする?」
 こどもが訊ねると、
「ううん、帰ってするからいい」
 冷たい笑顔でにやりと笑った。