マンボウは海の笑いものでした。
みんなすらりと長いしっぽがあるのに、
マンボウだけは体が半分。
「しっぽはどうした?」
「ぼんやりしてるうちにかじられたのか?」
いつもみんながばかにしました。
『ぼくにもみんなみたいなしっぽがあればなあ』
マンボウは考えます。
そしてあるとき、一匹の魚に出会いました。
まるで尻尾だけが別れてしまったような形。
それを見たマンボウは、喜び勇んで駆け寄って言います。
「ずっと君を探してた。いつもそばにいて欲しい」
それを聞いた魚は、飛び上がるほど喜びました。
その魚も、ずっとばかにされていたからです。
それからはいつも二人は一緒。
まるで一匹の大きな魚のようになったふたりを
ばかにするものはもういませんでした。
いい気分で泳ぎ回るマンボウ。
でもあるとき、しっぽの魚は言いました。
「もう、こういうのはやめよう?」
それを聞いて、マンボウは怒ります。
「何でだよ! ぼくたちうまくやってきたじゃないか」
悲しそうな顔をする魚は、そっとたずねました。
「ねえ、わたしのこと、好き?」
「好きだとか嫌いとかじゃない。
ぼくたちは一緒にいるべきなんだ」
魚は首を振ります。
「二人でつながって泳ぐより、二人で並んで泳ぎたかった」
「どうして! またばかにされるのに」
マンボウが訊ねると、泣きそうな顔で言いました。
「だって……わたしはあなたじゃない」
するとマンボウはふて腐った顔をして言うのでした。
「じゃあいいよ、もっといい半分を探すから」