0073
2006-01-25
ベターハーフ
 マンボウは海の笑いものでした。
みんなすらりと長いしっぽがあるのに、
マンボウだけは体が半分。

「しっぽはどうした?」
「ぼんやりしてるうちにかじられたのか?」
 いつもみんながばかにしました。

『ぼくにもみんなみたいなしっぽがあればなあ』
 マンボウは考えます。

 そしてあるとき、一匹の魚に出会いました。
 まるで尻尾だけが別れてしまったような形。
それを見たマンボウは、喜び勇んで駆け寄って言います。
「ずっと君を探してた。いつもそばにいて欲しい」
 それを聞いた魚は、飛び上がるほど喜びました。
その魚も、ずっとばかにされていたからです。

 それからはいつも二人は一緒。
まるで一匹の大きな魚のようになったふたりを
ばかにするものはもういませんでした。

 いい気分で泳ぎ回るマンボウ。
でもあるとき、しっぽの魚は言いました。
「もう、こういうのはやめよう?」

 それを聞いて、マンボウは怒ります。
「何でだよ! ぼくたちうまくやってきたじゃないか」
 悲しそうな顔をする魚は、そっとたずねました。
「ねえ、わたしのこと、好き?」
「好きだとか嫌いとかじゃない。
ぼくたちは一緒にいるべきなんだ」
 魚は首を振ります。

「二人でつながって泳ぐより、二人で並んで泳ぎたかった」
「どうして! またばかにされるのに」
 マンボウが訊ねると、泣きそうな顔で言いました。
「だって……わたしはあなたじゃない」
 するとマンボウはふて腐った顔をして言うのでした。

「じゃあいいよ、もっといい半分を探すから」