「おまえら、バカか。何でこんなこともできねえんだ」
乱暴に言葉を吐いて、上司が出て行く。
どうせ禁煙反対を唱えながら、
喫煙室で燻製になって戻ってくるつもりだろう。
ものの言い方も知らない男が消え、
ぎすぎすした空気が和らぐ。
「あんなんじゃ奥さんも大変だよな」
「いるのか、あんなのに?」
ふと出た疑問に、みんなの目が上司の同期に集中する。
それに気づいた相手。軽くため息をつきながら口にする。
「いや、たしか結婚してないはずだよ」
ああ……。
おれはなんだかほっとして、深く安堵のため息をついた。