「ようやく見つけました」
とある街道筋で、一人の娘が声を出した。
振り返る男は刹那、憮然とした色を浮かべたが
ぬめるような笑みで娘を見る。
「おうおう、誰かと思えば」
「不意打ちにて倒れた父の仇、
今こそとらせていただきます」
厳しい目でにらむ娘を楽しげに眺め、男。
「親父殿の元でのうのうと暮らした
箱入り娘になにができる」
「たしかに箸より重いものなど
持ったことはありません。
ですが、この度ばかりはわたしも死ぬ気で参りましょう」
肚をすえた目で、娘は手にした二本の棒を離した。
――どどん。
背丈ほどもある棒は真下で土を揺るがし、
倒れては地響きと土煙を巻き上げる。
「ま、待て」
男は腰を引き、手を突き出す。
「まさかそれが……」
「問答無用!」
娘は自らを鼓舞するように叫んだ。
「参る!」