0121
2006-02-08
こどものみほん
 ちょっと買い物に行って家に戻ると、
冷蔵庫の中のケーキがなくなっていました。
「こーら、だれが食べたの〜?」
 こどもに訊ねると、
「きおくにございません」
 真顔で首を振りました。

 もしかして、甘党のあのひと? 
そこで夫に訊ねると、
「いや、おれじゃないよ。そういや、
さっき冷蔵庫のところでごそごそやってたみたいだけどな」

 そこでまたこどもに。
「って、おとうさん言ってるけど? 食べたんでしょ?」
 小さくうなづく頭に……
「ほあちゃあ!」
 するどく手刀。
「うぎゃああああ〜! なんでだよう〜」
 恨みがましい目でわたしを見ます。
「あとであげようと思ってたから、
食べたのはまあいいよ。
でもね、それを訊いて、
うそをついたのがおかあさん許せない」

 するとふっと目をそらし、
「だって、ごまかせたらもうけものだから
とりあえずうそをつけって」
「え?」
「しゃかいにでて しょうじきにやってたら
じぶんだけバカをみるって」
「なにそれ? だれがそんなこと言ったの?」
 ちらりとわたしを上目で見て、
「せいじかならみんなやってるよ」
 ふてくさった物言いに、かっとして叫んでいました。
「あんなクズ、見本にするんじゃありません!」