ちょっと買い物に行って家に戻ると、
冷蔵庫の中のケーキがなくなっていました。
「こーら、だれが食べたの〜?」
こどもに訊ねると、
「きおくにございません」
真顔で首を振りました。
もしかして、甘党のあのひと?
そこで夫に訊ねると、
「いや、おれじゃないよ。そういや、
さっき冷蔵庫のところでごそごそやってたみたいだけどな」
そこでまたこどもに。
「って、おとうさん言ってるけど? 食べたんでしょ?」
小さくうなづく頭に……
「ほあちゃあ!」
するどく手刀。
「うぎゃああああ〜! なんでだよう〜」
恨みがましい目でわたしを見ます。
「あとであげようと思ってたから、
食べたのはまあいいよ。
でもね、それを訊いて、
うそをついたのがおかあさん許せない」
するとふっと目をそらし、
「だって、ごまかせたらもうけものだから
とりあえずうそをつけって」
「え?」
「しゃかいにでて しょうじきにやってたら
じぶんだけバカをみるって」
「なにそれ? だれがそんなこと言ったの?」
ちらりとわたしを上目で見て、
「せいじかならみんなやってるよ」
ふてくさった物言いに、かっとして叫んでいました。
「あんなクズ、見本にするんじゃありません!」