『いま、こうしている間にも
貧しい国でたくさんのこどもが死んでいます。
あなたの善意でこどもを助けてください』
テレビに悲惨な状況のこどもが映し出される。
「ひどいよね」
妻が言った。
「ああ、ひどい」
ぼくは応える。
「わたしたちのこどもだと思って、お金、送らない?」
「ええ?」
驚いて妻を見て、
「どうして大勢のこどもが死ぬと思ってる?」
「う……ん、食べ物がないとか
環境が悪いとかいろいろあると思うけど……。
やっぱりお金がないからじゃないかな」
お優しい妻。たしかにそこも好きなのだけれど。
「違うよ。『大勢のこどもがいるから』さ」