大学を卒業してから一年。
お互いの近況報告もかねて、女同士での集まり。
どこに行くかと相談していると、
親友が居酒屋に行った事がないと言うので
せっかくだからと流れ込んだ。
「いらっしゃいませ〜」
ざわざわとした居酒屋独特の雰囲気に、店員の掛け声。
その子は初めての場所にきょろきょろと
あたりを見回しながら席に着く。
すぐに運ばれてくる小鉢と伝票。
オレンジっぽいこのぬめっとしたものは、イカのなにかかな?
おなかがすいていたのでお通しだけ食べ始めるわたしの横、
親友は小鉢を見て、伝票をひっくり返して。
そして、わたしの口元をじっと見た。
「な、なに?」
訊ねると、
「それ、食べて平気なの?」
心配そうに訊く。
「あはは、大丈夫。これは席代みたいなものだから、
最初に絶対出るんだよ」
「でも……」
恥ずかしそうに口ごもり、
「お通じって書いてあるよ」