0159
2006-02-20
眠れぬ夜の
「うう……眠い……」
 いつもの不眠にベッドでごろごろしていると、
弟の部屋から苦しげな声が聞こえてきた。

 もともと寝られないのに、
そんな声が聞こえたらよけい寝られそうにない。
 しかたなく起き上がり隣の部屋へ行き、
「なあ、受験近いのはわかるけど、一度寝たらどうだよ」
 声をかけると、
「んあ?」
 魂の抜けたようなうつろな目がおれを見る。
「普段だって勉強してんだろ? 
寝不足でつめこみそこねるくらいなら、
軽く寝て体調を整えてからにしろよ」
「あ〜、うん」
 やる気のない体勢で立ち上がると、ベッドに倒れる。
 これでおれの睡眠も守られた。

 さあ、寝ようと自分の部屋で寝転がると、
すぐに壁の向こうから声。
「あ〜、眠い……」
 くそ。嫌がらせか?
 苛立ちに飛び起きて隣の部屋の扉を開けると、中は真っ暗。
 息を殺しながら近づくと、
どうやら寝息らしきものも聞こえてくる。
「くそ……眠い……」
 ここに寝られない人間がいるってのに、寝ながら眠いとは。
この……
「よくばりめ!」
 ぴしゃりと叩くと、弟はぼりぼりとおでこを掻いた。