「うう……眠い……」
いつもの不眠にベッドでごろごろしていると、
弟の部屋から苦しげな声が聞こえてきた。
もともと寝られないのに、
そんな声が聞こえたらよけい寝られそうにない。
しかたなく起き上がり隣の部屋へ行き、
「なあ、受験近いのはわかるけど、一度寝たらどうだよ」
声をかけると、
「んあ?」
魂の抜けたようなうつろな目がおれを見る。
「普段だって勉強してんだろ?
寝不足でつめこみそこねるくらいなら、
軽く寝て体調を整えてからにしろよ」
「あ〜、うん」
やる気のない体勢で立ち上がると、ベッドに倒れる。
これでおれの睡眠も守られた。
さあ、寝ようと自分の部屋で寝転がると、
すぐに壁の向こうから声。
「あ〜、眠い……」
くそ。嫌がらせか?
苛立ちに飛び起きて隣の部屋の扉を開けると、中は真っ暗。
息を殺しながら近づくと、
どうやら寝息らしきものも聞こえてくる。
「くそ……眠い……」
ここに寝られない人間がいるってのに、寝ながら眠いとは。
この……
「よくばりめ!」
ぴしゃりと叩くと、弟はぼりぼりとおでこを掻いた。