もともと十二人で仕事をしていたおれの部署だったが、
あれよあれよというまに六人が育児休暇に入ってしまった。
単純計算でも、倍の仕事をこなさなくては追いつかない。
もはや家に帰るより会社にいるほうが長く、
家にいても仕事の残りに寝られない日々。
課長にいたっては会社に泊まり込むことも
週の半分はあるらしい。
「かちょ〜!」
ひっきりなしにかかる電話を取りつつ、
注文を受けては数字をまとめつつ。おれは課長に呼びかけた。
「んあ〜?」
どこかしら吹っ飛んでしまった課長が
返事とも寝言ともわからない声をあげる。
「なんかこう……仕事が動くようになってきましたね」
「ああ、そうだな」
「半分の人数でどうにかなってるんなら、
別に彼女たち、元からいらなかったんじゃないですか?」
「ああ、そうだな」
「普段から仕事もしないで、休んでも金もらって。
そんな金あるならおれが金欲しいですよ」
「それはおれも思う。休んでる奴にやる金はあっても、
休んでる奴の仕事をする奴らにやる金はないそうだしな。
女性は職場にいらないって意味がようやくわかったよ。
権利を守るなんて、金持ちの特権だな」
「あははは、課長、それ男女差別ですよ」
「あははは、そうか、差別なのか?」
正直何を言っているかわからない口が勝手に動く。
「おふたりとも、今日はもう帰って休んでください」
部署の年配の女性の言葉に、
「「今日だけ休んでなんになる!」」
おれと課長は叫んだ。