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2006-03-01
そしてより強く
 もともと十二人で仕事をしていたおれの部署だったが、
あれよあれよというまに六人が育児休暇に入ってしまった。
単純計算でも、倍の仕事をこなさなくては追いつかない。

 もはや家に帰るより会社にいるほうが長く、
家にいても仕事の残りに寝られない日々。
課長にいたっては会社に泊まり込むことも
週の半分はあるらしい。
「かちょ〜!」
 ひっきりなしにかかる電話を取りつつ、
注文を受けては数字をまとめつつ。おれは課長に呼びかけた。
「んあ〜?」
 どこかしら吹っ飛んでしまった課長が
返事とも寝言ともわからない声をあげる。

「なんかこう……仕事が動くようになってきましたね」
「ああ、そうだな」
「半分の人数でどうにかなってるんなら、
別に彼女たち、元からいらなかったんじゃないですか?」
「ああ、そうだな」
「普段から仕事もしないで、休んでも金もらって。
そんな金あるならおれが金欲しいですよ」
「それはおれも思う。休んでる奴にやる金はあっても、
休んでる奴の仕事をする奴らにやる金はないそうだしな。
女性は職場にいらないって意味がようやくわかったよ。
権利を守るなんて、金持ちの特権だな」
「あははは、課長、それ男女差別ですよ」
「あははは、そうか、差別なのか?」
 正直何を言っているかわからない口が勝手に動く。

「おふたりとも、今日はもう帰って休んでください」
 部署の年配の女性の言葉に、
「「今日だけ休んでなんになる!」」
 おれと課長は叫んだ。