0217
2006-03-07
真夏の夜の恐怖
 その日は、蒸し暑く寝苦しい夜でした。
 ごろごろと寝返りをうちながら、
寝ているのか寝ていないのかわからない時間を
すごしていたときのこと、ふとうつ伏せで
枕の下に手を入れました。
 そこには、ひんやりとしたなにか気持ちのいいもの。
 涼を求めてそれをまさぐります。
冷たくて、すべすべで、何か細いものがついていて……。

 ――細いもの?

 辿る指に、頭が意識を取り戻し始めます。
 細くて……さらさらしていて、
それが一本、二本、三本四本。そして、離れて太い一本。

 手だ!
 しかも死人の手。
 ぞっとして声も出ず、跳ねるように体を起こ……
そうとして、頭から枕につっぷしました。
 ……なにこれ?

 どうなっているのか確かめようと右手をライトに伸ばします。
でも。動くものはなにもありませんでした。
 もしかして、枕の下にあるのは――?
 冷や汗がだらだらと流れてきました。

 覚悟を決めて、それを枕の下から引き出します。
けれど、手を離せばベッドの上にぼたりと落ちるのです。
 これが、本当にわたしの手? 
ひょっとしたら、どこかでもげてるんじゃ……?
 指を伝い、手の甲をたしかめ、腕を辿ってひじへ。
その上に行くと、びりっと尖ったものを
つつくような傷みが走りました。
 耐えながらさらに上に行くと、つながっている肩の肉。
 どうやら正座していて足がしびれる、
あれのひどくなったものだったようで。
そのときわたしは笑えもせずに、
腕がつながっていることに心からほっとしたのでした。