0227
2006-03-09
リストラ
 毎日毎日片付けても、毎日毎日散らかしっぱなしに
するおもちゃ。
 もう使わないでいつもおもちゃ箱の底にあるものも
そのままにするからどんなにやっても片付かない。
 わたしがいくら掃除をしても
なにも変わっていないような見た目に、
とうとう娘に強い口調で言ってしまった。

「おかあさんがお洗濯してくる間に
おもちゃをリストラしておいてよ。
もし片付いてなかったら、全部捨てちゃうからね!」
 おびえた目でわたしを見る娘に
自己嫌悪しながら洗濯をしていると、
夫が慌てた様子で駆け込んできた。
「あの子に何言ったんだ?」
「どうしたの?」
 訊ねると、
「来て」
 真剣な顔でわたしの手を引く。

 部屋の中では娘が見るのも
痛々しいくらい小さくなって泣いていた。
ぺたんと床に座りこむ周りに、
いくつもの人形やぬいぐるみの頭が、
体から離れて転がっている。
中にはこの子が大事に大事にかわいがっていたものもある。
「な、なにこれ。どうしたの?」
「君が、言ったんだろ。人形の首を切らなかったら
全部捨てるって」
 頭から音を立てて血が引いていく気がした。

「ちがうよ。わたしは……ただ……。
いるものといらないものをわけておもちゃ箱を整理してって……」
「そうなの?」
 夫が娘に訊ねると、娘は小さく首を振る。
「おかあさん、リストラしてってゆった」
 リストラをただ首切りだと思った娘。
自分の大切にしていた人形の首を
自分の手で切り落とすなんてどんな気持ちだったのかと思うと、
胸がつぶれる想いがして、苦しさにただ、涙が出た。