うちの会社も経営が厳しく、
何人かにやめてもらわなくてはならなくなった。
だが、社員がやめさせる社員を選んだとわかっては、
やめるほうも割り切れないだろう。
そこで案内の入っていた、リストラ代行を頼むことにした。
やってきたのは凛とした目の若い女性だった。
女性はわれわれが差し出した紙に目を走らせると
急に凍るような目つきになり、
懐から合い口を取り出して自ら首筋に当てた。
止める間もなく刃を滑らせた切り口からは
ひどい勢いで赤い液体が噴き出し、部屋に飛び散って行く。
「どう?」
女性は赤い血の向こうで叫んだ。
「これがあなたたちのやりたいこと?
何を考え、どれだけためらい、どれだけ絞って出した答えなの?
こんな……こんな乱暴なこと!」
女性の全身ががくがくと震えだす。
わたしはその光景の一瞬一瞬を
脳裏に刻み込みながら立ち尽くしていた。