0234
2006-03-14
なんてすてきな
 今日はわたしたちが正式に付き合うようになってからの
初めてのデート。
 せっかくだからと普段はあまり着ないスカートなんかをはいて
すこしおしゃれして待ち合わせ場所へ。

「あれ? 待ってた?」
 いつも遅れてくるはずの彼がそこにいて、
わたしを見ると怒ったような顔でぷいとどこかを向いてしまう。
「ああ、待った。すごく待った。なにやってたんだ」
 時計を見ても、時間前なのに。
「ほら、行くぞ」
 寄りかかっていた壁から体を起こし、歩き出す彼。

 ……なんだかがっかり。なんでこうなっちゃうんだろう。
わたしがなにかした? せっかくのデートなんだよ? 
はじめてなんだよ?
 後ろをとぼとぼとついていくと、
どこかから変な音が近づいてきたと思ったら、
急に下から風が拭いてきた。
「わっ、やだっ」
 舞い上がるスカートを押さえようとしたとたん、
急に引っ張られて。
 気づいたらわたしは彼の腕の中にいた。

 え? え?
 ゴー……、がたたん、がたたん。
 強い音と風の中、彼はぎゅっとわたしを抱く。
 しばらくしてようやくおさまってくると体を離して、
「そんなひらひらしたのはいてるからだ」
 また怒ったように顔をそらすと歩きはじめてしまう。
「ね、もしかして、スカート押さえててくれたの?」
 駆け寄ってのぞきこむと、
「知るか」
 ぷいっとそらす顔。

 ああ、この反応……!
「さっきから、怒ってたんじゃなかったんだ」
「え? なんで怒るんだよ」
 驚いたように振り返る。ちょっといつもっぽくなった彼。
「ねえ、男子って。そういうの見えたら
ラッキーって思うんじゃないの?」
 たずねると、どこか違うところに視線を移して、
「周りに誰もいないならな」
 そっけなく言った。
 周りに、誰もいないなら?
 ……ああ、男の子って、男の子って。

「かわいー!」
 腕にしがみつくわたしを、
「うわっ、なんだよ」
 本気で振りほどこうとした。
「あははは、いいじゃない。嫌じゃないでしょ?」
「ん……まあ」
 照れた顔をする彼がかわいくて。

 その日はもっと、特別な日になった。