その日の朝、わたしがいつものように教室に行くと、
中の空気はどこかそわそわ。
同じ学校に男子がいなくても、やっぱり今日は特別。
席についてかばんの中身を移そうとすると、
机の中に何かあるのに気づいた。
「あれ、これ……」
中にあったのはかわいい包み。
でも、どこにも差し出し人の名前はなくて。
「これは、事件ですよ」
気分を出してつぶやくと、
「ああ、それ? 朝、髪これくらいの、背がこれくらいの、
うつむき加減の子が渡してってもってきたよ」
友達が言った。
うーん、そうすると……委員会の方じゃなくて、
クラブのほう?
「あ、ちょっといいかな?」
心当たりのクラスをのぞきこんで声をかけると、
周りから小さな歓声。
お目当ての子も気づいてやってきた。
「金色のかわいいリボンの包み、あなた?」
訊ねると、柔らかな黒髪を揺らしてうつむき、
「あ……ごめんなさい。やっぱり、迷惑でした?」
「なぁに言ってるの。そんなことないよ。はい、これ」
「え?」
差し出すのは昨日作ったチョコ。
「おかえし。返せなかったらさみしいでしょ?」
あんまり得意じゃないからただ溶かして形を変えただけだけど。
「わ、ありがとうございます」
嬉しそうな顔をして受け取ってくれると、わたしだって嬉しい。
「あとね」
ちょっと声をひそめて。
「お昼休み、みんなであまったチョコ広げるから、
よかったら来てね」
「え、でも……学校じゃ……」
わたしは唇に指をあて、ひとつウインク。
「ないしょ。年に一度のことじゃない」