0254
2006-03-17
世界をまわす
 はた、と気づいた。
おれってもしかしてすごい奴なんじゃないか?
 そう考えれば思い当たることはたくさんある。
 出かけるときは晴れ続きだし、
どんなことだってやればできる。
 そうだ、おれはすごい!
 なのに、世の中はみんなしけた面だ。
「あ〜あ〜、どこも不景気だな。早く景気よくならないかな」
 横の男たちが話している。
 くっくっくっくっ。
 まあ、待て待て。こんな不景気くらい、
おれがすぐに終わらせてやるさ。

         *

 いつもうんざりだった。
おれはなんでこんな世界に生まれてきたんだろう。
 世界は義のないものこそはばをきかせ、正直者がばかをみる。
 昔は働き手なんていくらでも需要があったのに、
今日びは最初から高い能力を求められる割に、
派遣派遣で使い捨てばっかりだ。
「あ〜あ〜、どこも不景気だな。早く景気よくならないかな」
 横の男たちが話している。
 ……景気なんてよくなるわけないさ。
 おれが生きてる時代にはろくなことが起こらないんだ。

         *

 建物の前で二人は出会い、精神科医への扉を開けた。