はた、と気づいた。
おれってもしかしてすごい奴なんじゃないか?
そう考えれば思い当たることはたくさんある。
出かけるときは晴れ続きだし、
どんなことだってやればできる。
そうだ、おれはすごい!
なのに、世の中はみんなしけた面だ。
「あ〜あ〜、どこも不景気だな。早く景気よくならないかな」
横の男たちが話している。
くっくっくっくっ。
まあ、待て待て。こんな不景気くらい、
おれがすぐに終わらせてやるさ。
*
いつもうんざりだった。
おれはなんでこんな世界に生まれてきたんだろう。
世界は義のないものこそはばをきかせ、正直者がばかをみる。
昔は働き手なんていくらでも需要があったのに、
今日びは最初から高い能力を求められる割に、
派遣派遣で使い捨てばっかりだ。
「あ〜あ〜、どこも不景気だな。早く景気よくならないかな」
横の男たちが話している。
……景気なんてよくなるわけないさ。
おれが生きてる時代にはろくなことが起こらないんだ。
*
建物の前で二人は出会い、精神科医への扉を開けた。