「わたし……いつか死ぬかもしれない」
友達が、ふと電話で言ったのは何のきっかけだったろう。
「あはは、だれだっていつか死ぬよ」
わたしが言ったのはたしかそんな言葉。
「ふふ、そうだよね」
薄く笑った友達。
そして、その次の日。
――友達が、自殺した。
「うそ……。うそだよ」
だって、あんなに明るかったのに。
死ぬって、あんなに軽く、言ってたのに。
でも、もし。わたしがもし、ふざけなかったら。
ちゃんと話をしていたら、今だって生きていた?
「わたしの、せい?」
そう、きっとそう。
わたしが、殺した。わたしが殺したんだ。
叫び出したい狂気の中、体は勝手に電話をしていた。
「はい?」
あたたかい彼の声。ほっとしたのに、
のどが詰まって声が出ない。
「どうかした?」
心配そうに訊くのに。
こんなわたしが何を言えばいいのかわからない。
「あ……あの、ね」
やだ、こわい……こわい。
「わたし」
おでこにはじっとりと汗。
「わたしが人殺しだって言ったら、どうする?」
何をばかなこといってるんだと笑いとばして欲しかった。
わたしがあの子にしたように。
言いたい事をわかって欲しかった。わたしのこの絶望を。
こんな矛盾した気持ちの中、彼は。
「なにか、あった?」
あたたかな声。その振動が胸を叩き、震える体に涙が落ちた。
「……なんでそう訊くの?」
揺れる声。
「うん? だって」
言いにくそうに声をひそめて。
「冗談めかさないと言えないくらい、大事なことでしょ?」
涙が出た。
……そうだったんだ。わたしが、訊けばよかったんだね。
「どうしたの、だいじょうぶ?」
「会いたい」
傲慢なわたしの自分勝手ないいぶん。
「会いたい……」
あいたい、あなたに。それに、友達に。
「待ってて、今いく」
「来ないで」
口が、言っていた。
わたしなんかが会う資格なんてない。
自分だけ楽になろうなんて許せない。
「すぐ行くから。電話、切らないでよ」
「来ないで」
嬉しいのに、苦しい。会っちゃだめなのに。
楽になっちゃいけないのに。
「それだけはきけない。
どんな迷惑になったって会いに行くから」
「迷惑なんかじゃない……」
電話を握り締め、胸の奥から出てくる言葉。
「――助けて!」