今日は友人の結婚式。
バイト先でつかまえた年下の彼女ととんとん拍子で結婚。
正直こんなとこなんて来たくなかったけれど。
披露宴がはじまるまでの間テーブルについて
ぼんやりしていたら、テーブルの向かいに
同い年くらいの男が座った。
見るからにまじめっぽく、
どうにもモテそうにない同類のにおいがした。
「あいつの友達っすか?」
訊ねるとすこし戸惑う雰囲気を見せて、
「えーと? お嫁さんの、知り合いです」
「へえ〜。いいっすね。
知り合いはみんな男ばっかで友達だからって、
正直喜べないですよ」
相手は軽く肩を寄せると、
「友達だから、悔しかったりしますよね」
「ああ、それそれ!」
さすがにそこまで言えなくて
やめたことを言われて思わず笑う。
「いいっすよね、なんであんな子と知り合えるんだろ……。
いっぺんくらいもてたっていいじゃないっすかねえ」
「うーん」
苦笑いの男。
「機会の差でしょうね、きっと。
大勢にもてはやされなくても
たくさんの人と出会って時間をすごしていれば、
どんなに目の大きなザルにもひっかかってくれる一粒は
ほんとにあるものなんですよ」
「へえ〜? そんなもんっすか?」
と、男の後ろに女の子。
「せーんせっ。始まる前にみんなで写真撮ろうって」
男の首に抱きついた。結構年下に見えるが、
冗談じゃなくかわいい子だ。
「こら、人前で先生はやめなさい」
立ち上がりながら声をひそめる言葉に、
悪びれることなく小さく舌を出す。
「じゃあ、ちょっと失礼します」
会釈に会釈を返すと、腕に絡む女の子に
引っ張られるようにその男は歩いて行った。
「先生、か……」
つぶやくと。
「ん? どうした?」
トイレに行っていた友達が後ろにいた。
「ん〜」
遠くに歩いて行く二人の背中を見ながら。
「おれ……先生になろうかな」