とある休日の昼。買い出しから帰る途中、
どこからかいい匂いがした。
甘く香ばしく、なんだか幸せになる香り。
そのまま自転車を走らせていると、
普段は人のいない空き地に
大人やらこどもやらが何人も集まり、
一台の車を囲んでいるのが見えた。
興味のままに中に入ると、
荷物を載せるような車の後ろで、
なにか長いものが回っているようだった。
近づくにつれて、香ばしさも甘い匂いも
どんどんその濃さを増していく。
なんだろう?
自転車を適当に混ぜてとめて近づくと、
こどもたちは手で耳をふさいで筒をにらんでいた。
「ほら、いくよ~」
とおじさんが言うと、
――どどん!
「わあっ」
いきなりの音に半分とびのいて身構えるわたし。
気づいたこどもたちがくすくすと笑った。
な、なに……?
「ほーら、できた」
おじさんの手にするカゴのようなものには、
膨らんだ白い粒がたくさん。そして漂ってくる甘い匂い。
「うわ~! 懐かしい」
思わず声をあげると、車の持ち主らしいおじさんは
にこにこと笑みを見せた。
さっきから遠くでバイクが音を鳴らしてたと思ってたのは
これだったんだ。
「どう? 試食して、よかったら買って行ってよ」
すこしもらって手のひらに載せて食べてみる。
しゃわしゃわと軽快な歯ごたえ。
あたたかくて甘いお菓子。
これが元々はお米だったなんて思えないくらい。
「昔、車がくると、お米持って走りましたよ~」
一袋買って食べながら、
あまりの懐かしさに思わず口にすると、
まわりのこどものおかあさんたちも笑ってうんうんとうなづいた。
「そのあとずっと見かけませんでしたけど、
今まではどうしてたんですか?」
訊ねると、にこっと笑って、
「ちょっと国際警察に捕まってな」
「ええっ?」
「いや~、テロリストと勘違いされちゃったよ」
爆弾屋さんのおじさんは、そう言ってからからと笑った。