0294
2006-03-29
孤独
 稀代の按摩師と呼ばれる女性がいた。
 彼女の元には引きも切らず人が訪れ、
再び戸から出るときにはその顔に笑顔をたたえているのだった。
 彼女はそれを喜びとし、誇りともしていたが、
どうしてもこみ上げる思いを止めることはできなかった。
「ああ、世界一の気持ちよさというものを、
わたしはどうして味わえばよいのだろう」
 彼女は深く息をもらしてつぶやいた。