0301
2006-03-30
流れのない水
 人事部室。同僚がパソコンのモニターを見ながら、
大きくため息をついた。
「なんだ、どうした?」
「あいつ。今度の所でもまた上から異動願いが出てるよ」
「あの能無しか……」
 名前なんぞ言わなくてももう通じ合うほどの男だ。

「デスクワークにも役に立たないわ、
電話とらせたらクソ対応でクレームを量産するわ、
他に何があるってんだ」
「窓口……か?」
「窓口!? なんでそんな」
 思わず訊くと、指に挟んだボールペンをふらふらと揺らし、
「あそこしか残ってないし、電話や資料よりも仕事は少ないだろ」
「でも、自分たちで金を払って
自分が不愉快になるあんなのを雇ってると思ったら、
税金なんてばかばかしくて払ってられないよな」
「考えないほうがいいぞ。政治家の給料なんて
おれたちの比じゃないし」
 二人で一緒にため息をついて、投げやりに叫んだ。
「まったく、公務員さまさまだ!」