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2006-04-07
文字の訴え
 教育実習でわたしが黒板に文字を書いていると、
背中から生徒の一人が叫んだ。
「せんせー、書き順違う!」
 ふう、やれやれ。と思ったけれど、
そんなこと言うと叱られるのでにこやかに振り向く。

「わたしの書き方は外国式だから違って見えるかもしれません。
基本を学ぶみなさんは国の標準的な書き方で書いてくださいね」
 授業が終わると、監督の教師が訊ねた。
「さっきのだけど、どこで学んだの?」
「ああ、外国では書き順なんてありません。
だれが作ったのかも知れない格式にだけ
こだわるこの国とは違い、自分の文字が
一番よく見える書き方をするんですよ」
 きっと嫌な顔をしているのを見ないように、わたしは口にする。
「一番見栄えよく書いてとわたしの文字が訴えるままに、
わたしは書いているのです」