「ねえ、わたしたち、別れよっか?」
休みのお昼のファミレスで。わたしは彼に言った。
彼はすこし驚いた色を浮かべ、それから寂しげに笑って、
「うん」
「なんで?」
わたしは思わず聞き返す。
「わたしのこと、嫌いになった?」
「まさか」
眉を寄せ、
「でも、人の心は移るものと知ってる。
それを認めないほど傲慢なつもりはないし、それに……」
「それに?」
「気持ちは加速する。
好きなら好きでどんどん高まるし、
いったん嫌いになったらどんどん嫌いになっちゃう。
変わってしまった相手の気持ちなんて、
自分がどうにかしたところで元に戻るものじゃないでしょ?」
胸の苦しさに、わたしは言った。
「違う! 嫌いなんかじゃない。好きだよ」
するとほっとした顔をして、
「そう、よかった。ぼくもだ」
そっと手を差し出した。
「これからもまたよろしくね」
「あ、うん。こちらこそです」
そして飲み物を取りに立ち上がる彼の背中を見ながら、
思い出すこと。
「……また、わたしだけ好きって言っちゃったなぁ」