医者になった友達と久しぶりに会い、
おごりだという言葉に甘えて高そうなバーでグラスを傾けた。
だまって一杯傾ける間にも小さくないため息が漏れる。
「なんだ、大変そうだな」
「ああ、最近は医者の風当たりも強いからな。
みんないつ自分が訴えられるんじゃないかと
びくびくしながら診察してるよ」
「確かにな。患者の言葉なんてあてにならないし、
それでも話し聞きながら、見えもしないところを探るんだもんな。
手札をほとんど伏せられたままで
相手の手を間違いなくあてろなんて……
そんなことできたらカジノじゃ出入り禁止だ」
意外そうな目がおれに。
「医者、やってたんだっけ?」
「パソコンのな」
答えると、
「パソコンなんてとりあえず開けてみても
部品交換してもいいけど、人間でそんなことしたら
間違いなく裁判だぞ」
むっとする顔に、
「ああ。相手が機械でよかったよ」
高いカクテルを持ち上げた。