0383
2006-04-24
都会のこども
 最近学校の子が夜の街をうろついているというので、
教師の有志でみまわりをすることになった。
 そしてふと見かけた、見覚えのある背中。
でも追いつく前に見失ってしまった。

 そこで次の日、まずまちがいない男の子を
指導室まで呼び出して訊ねる。
「ねえ、昨日の八時ごろ、なにしてた?」
「家でテレビ見てた」
 でも目を見つめるとそらしてしまう。
「どんな内容だった?」
「あんまり覚えてないけど、鮭が川を上ってたよ」
 そういえば、教育番組のところでそんなタイトルを
見た気もする。
 でも、それにしてはどうにもうさんくさい反応。
「どんな感じだった? 絵に描いてみてくれる?」
 予想もしてなかったのかひどくうろたえた顔をして、
それでも渡したチラシの後ろに絵を描き始めた。

 ……切り身が川を遡上する光景を。