0384
2006-04-24
フォアグラ
 家庭科教諭兼の栄養士として学校からお呼びがかかり、
まずは学校を見に行った。
 昼休みの教室を覗き込むと、給食を前に
教室に残っている生徒がぼちぼちといるのに気がつく。
「あれはなんです?」
 訊ねると、
「給食は残さず食べるまで休みは無しにしてるんですよ」

 それから何日か。わたしは調理室を借りて、
先生方に料理を振舞うことにした。
 得意のチャーハンを出すと、先生たちは喜んで食べはじめる。
でも大袋のお米すべてを得意のチャーハンにするまで
ひたすら調理をし、次々に先生たちの前に並べていった。
「先生、さすがに多すぎじゃないですか?」
 食べながらの先生が笑って言うけれど。
「多くても食べられなくても、
食べるまで席からは立たせませんし、この教室からは出しません」
 わたしははっきり言い切った。
 早々にもてあまし始める人、むりやりでも詰め込む人。
それでもしばらく経つ頃には、
だれもがうつろな目で自分の前のお皿を眺めるだけになった。
「どうしました? まだこんなに残ってるじゃないですか」
「どう考えても無理ですよ、こんな量」
 その言葉に、わたしはこぼれてくる冷たい笑みを
隠すことなく口にした。

「いいから食え」