0389
2006-04-25
いつか青くなる鳥
「あ〜、幸せになりてぇ」
 アパートの一室で横になりながら少年がつぶやいた。
「幸せになれるとかいう青い鳥でも探しに行く?」
 妹が訊ね、二人はリュックに夢と希望と
いくらかのお金を詰めると、家の外へと踏み出した。
「さて妹、どこに行く?」
 兄がたずねると、
「ふっふっふ。実は街なかのバッタ屋から、
青い鳥捕獲マニュアルを買ってきたのよ。
それによると……青い鳥は家の中にいる!」
 そこで二人は家の中に戻り、元からあった鳥かごを覗き込んだ。
「なんでぇ? 青くない」
 兄は軽くため息をつき、笑って言った。
「青いな、おまえは。
家から離れて初めて家のありがたみがわかるように、
そして病気になって初めて健康のありがたみがわかるように。
苦労してこそ、はじめて鳥は青くなるんだよ」
「え〜」
 妹は口を尖らせて、
「そんなんじゃ、しばらくしたら色落ちしちゃうじゃない」