薄暗い部屋の中、明るい場所。
暗がりに沈む人たちの中、男性は口を開いた。
「はるか遠い神々の時代、はじめての女性が生まれました。
神々たちにすべての贈り物を与えられた、
という名のとおり、彼女は美しく、やわらかく、
清らに香り、その歌は力をも入れずしてあめつちを動かし、
眼に見えぬ 鬼神をもあはれと思わせるほどであり、
傷つくものにはかいがいしく
手当てをする心を持っていたそうです。
また、彼女は開けるなと言われた壺を持っていました。
ですが彼女も、付き合う男性も好奇心には勝てず、
彼女の蜜壺に猛り狂った暴力的な棒を挿入してしまいます。
そのとき、世界にありとある厄災が生まれました。
男は女性をめぐって争うようになり、やっかむようになり、
その快感を得るために時にお互い争い、
時には金を盗み、人を傷つけ、その心、
体が手に入らないと嘆き、
自分には欠けているものが手に入らないという
虚無感に襲われるようにもなりました。
あまりの快感に瞬間で果てた男。
あまりの痛みに瞬間で体を引き、壺を閉じた女性。
でも、すべてのものが生まれ出たと思いきや、
まだ一つ、生まれ出ていないものがあったのです。
それは……こども。
そのときに受精し、生まれた命にわれわれは希望、
もしくは絶望の意味を与えてきました。
現在どちらであるのかは、
新郎に訊かねばわかりませんが。
とりあえずわたしは言っておきましょう。
ご結婚、おめでとうございます」