0390
2006-04-25
すべての贈り物
 薄暗い部屋の中、明るい場所。
 暗がりに沈む人たちの中、男性は口を開いた。

「はるか遠い神々の時代、はじめての女性が生まれました。
神々たちにすべての贈り物を与えられた、
という名のとおり、彼女は美しく、やわらかく、
清らに香り、その歌は力をも入れずしてあめつちを動かし、
眼に見えぬ 鬼神をもあはれと思わせるほどであり、
傷つくものにはかいがいしく
手当てをする心を持っていたそうです。
 また、彼女は開けるなと言われた壺を持っていました。
ですが彼女も、付き合う男性も好奇心には勝てず、
彼女の蜜壺に猛り狂った暴力的な棒を挿入してしまいます。
 そのとき、世界にありとある厄災が生まれました。
 男は女性をめぐって争うようになり、やっかむようになり、
その快感を得るために時にお互い争い、
時には金を盗み、人を傷つけ、その心、
体が手に入らないと嘆き、
自分には欠けているものが手に入らないという
虚無感に襲われるようにもなりました。

 あまりの快感に瞬間で果てた男。
あまりの痛みに瞬間で体を引き、壺を閉じた女性。
でも、すべてのものが生まれ出たと思いきや、
まだ一つ、生まれ出ていないものがあったのです。
 それは……こども。
そのときに受精し、生まれた命にわれわれは希望、
もしくは絶望の意味を与えてきました。
 現在どちらであるのかは、
新郎に訊かねばわかりませんが。
とりあえずわたしは言っておきましょう。

 ご結婚、おめでとうございます」