0396
2006-04-26
最後の希望
 街を歩く二人の男性は、
いつしか前に一人の女性が歩いているのに気づいた。
 華奢な骨格、細い腕、低い背。
背筋を伸ばすきれいな歩き、落ち着いた清楚な服、
整った頭骨から流れる黒く長い髪が揺れる。
「すごくかわいいな」
 男が隣をひじでつついてささやいた。
「ああ、顔が見てみたいな」
 相手が答えたとき、後ろで叫び声があがり、
前にいた女性が振り向いた。
 その感想。
「……後姿だけはきれいだったのにな」
 片方がもう片方を見ながら言うと、男は目をつぶっている。
「なんだ、見なかったのか?」
 その問いに男は目を開けて答えた。
「未知こそ希望。パンドラの箱は二度目を開けちゃだめなのさ」