0422
2006-05-10
気高い人
 大学で仲良くなった友達と次のクラスへ移動中、
後ろから声をかけられた。
「ねえ、今の授業、ノート貸してくれない?」
 いかにも軽そうで無神経そうな、わたしの苦手な感じの相手。
でもむげに断るのもどうかと言葉を捜していると、
「どうして?」
 友達が訊いた。
「うちらあの授業、あんまり出られなくってさぁ。
お昼ごはんおごるから、おねがいっ」
「ばかにしないでよ」
 目に憎々しげな光を浮かべてうちつけるように口にした。
「なんで? なんか怒ってる?」
「わたしは、乞食じゃない。しかもエサで人を釣ろうとする、
あなたたちのその性根が気に入らない。
人にものを頼むなら、それなりの仕方があるでしょ?」
 きっぱりとそう言うと、背中を見せて歩き出した。
 言い過ぎじゃないかと思ったけど、
一度これくらい言えたらなあと追いかけながらわたしは思った。