「こんなのもわからないのか、バカ」
上司がまた他の奴をののしった。
だれが叱られてるのかと思ったら、
おれの気に入ってる内気な感じの子だ。
「まあまあ、お手柔らかに。IQ135なんでしょう?」
とりあえず怒りの矛先を変えるために
からかうように言ってみせると、
「なんだ、その言い方は。上位5%なんだぞ」
案の定くいついてきた。
「そうですか、ぼくはIQなら158ですけど、
上位何%に入ります?」
おれが言うと、信じられないという目をして、
「うそだろう?」
「ならさっき出した書類、見てみてください。読みますよ」
頭の中に写真を浮かべ、書いてある文字を頭から読んでいくと
上司だけでなく、周りも驚いた顔になる。
「IQテストくらいこれでどうにでもなりますよ」
おれは上司の目を見た。
「……で? こんなことができると、なんです?
その瞬間が欲しいなら写真を撮ればいい、
わからないなら調べなおせばいい、それだけのことです。
そんなものでは代わりもきかなく、数字にもならない、
よっぽど大切なものは他にあると思いませんか?」