「これ、サイズ違いありますか?」
高くない服屋さんでぶらぶら見てたら、
向こうから友達っぽい声が聞こえた。
のぞいてみるとやっぱり友達。
そばには初めて見る、彼氏らしい人。
とりあえず二人そろっているところを
こっそりカメラに収めてようすをうかがっていると、
モノに満足したらしい彼氏がレジに向かい、
友達はその場に残った。
そこで彼氏を見送る友達の後ろから忍び寄り、声をかける。
「店員に声かけるところなんて、はじめて見たよ。
あと彼氏の顔もね」
友達は跳ね上がるほど驚いて、
「な、なんで?」
慌てた顔でわたしに振り向いた。
「偶然、ぐうぜん」
手を振って落ち着かせ、あらためて驚きを口にする。
「めずらしいね、自分から声かけるなんて。
いつも置いてなかったら別にいいとか言って諦めちゃうのに」
そしてわたしが声かけるのに。
「え? あ、うーん」
まだどこかあわあわしながら、
「彼もね、あれば欲しいって言うのに、
自分のだと訊いてまではいらないって言うんだ」
「で、代わりに声をかけてる、と」
訊くと困った顔で薄く笑いながら、
「なんかね、なんだかよくわかんないけど……
自分のじゃないと、だいじょうぶみたい」
そう言って目をほそめる友達に、
微妙な嬉しさと寂しさを感じて。
「大事な人のためにだけ出せる勇気、かぁ」
つぶやきながら、心で泣いた。