胸の中にある正体不明のくすぶり。
なんであの子が気になるんだろう。
……見てほしい。自分を気にかけてほしい。
「いたっ!」
髪をひっぱられた女の子の声。
引っ張った男の子は笑いながら駆けていく。
「ばかだね、ほんっと、ばかだねえ」
その場面を、解説を入れながら
友達と見ていたわたしは思わずつぶやいた。
「好きな子には優しくするだけでいいのに」
すると同じく公園のベンチに並んで座る友達は、
「さすがに小学校の男の子にそれは無理な注文じゃない?」
軽く笑って言った。
「そんなのわかってるけどさぁ。あの女の子、
なんで自分はいじめられるんだろうって思ってるよ、絶対」
「まあ、そうだね」
ちょうど下校時間なのか、
ぼちぼちと通るランドセルのこどもたちを見ながら、
わたしは手にしたジュースを傾ける。
「自分が相手を気になってることにも気づかず、
自分に振り向いてほしいあまりに
ろくでもないことをくりかえし、
そして相手の気持ちをむしろ遠ざける。
そのことすら自分で気づいてないだけによけいたちが悪いよ」
「でも、優しくするにも、なにすればいいか
わからないんじゃない?
あの頃だと、女の子と一緒にいるだけでも
冷やかされたりするみたいだし」
「ゆがんだ世界だ」
ひとつ、ため息。
「でも、なにも考えてないときのほうがが男の子はかわいいよね」
「ええっ?」
思わず見ると、
「だって、考えてみてよ。
小学生なのに女の子の気持ちがわかって、
優しくてちょっとおしゃれな男の子って……」
「将来ゲイかホストか、もしくは現在口うるさい姉のいる弟?」
「あはは。……でしょ?」
「そんなもん、かぁ」
わたしは頬杖をついて、自分の気持ちさえ
もてあますこどもたちを見つめた。