0446
2006-05-20
付け加える
「ねえ、ちょっといいかな」
 会社の休憩室で声をかけられ、わたしは答える。
「うん? お金の相談以外ならね」
 するとその子はテーブルをはさんで向かいに座り、
すこし視線をそらしながら口を開いた。
「もし……もしさ、友達と同じ人を好きになったら、
あなたなら、どうする?」
「ん〜、べつに?」
「えっ? なんで?」
 意外な顔。
「ええ? だって、わたしが好きなことも友達が好きなことも、
向こうは知らないわけでしょ? 
結局二人とも告白したところで両方とも
ふられるかもしれないんだし、こっち側で考えることって、
すべて無駄じゃない?」
 するとどこか嫌そうな顔で、
「ええ〜、なんか変。どっか機械っぽいっていうか……」
「えええ? なにが? どうして?」

 そして後日。
「ねえ、ちょっと話できる?」
 別の人に声をかけられ、わたしは答えた。
「お金と恋愛の相談以外ならね」