0447
2006-05-20
夢のその先
 ずっと胸に感じていた熱いもの、
いつか何かをやらなければいけないという疼き。
 ――だが、何を?
 それはわからない。でも、なにかをしなければ
いけないことだけはわかっていた。
 したい、知りたい、はやく見つけたい。
その想い以外ものもはすべて邪魔だった。
 何年も何年も回り道をし、ばかみたいにさまよって、
そして、ようやく見つけた。
 おれがすること、すべきこと。おれのたどり着く場所。

 夢中だった。夢中で水をかいた。
 ずっと持ち続けたいらだちやとあせり、
それらがすべて洗い流されていくのがわかる。
 はげしい流れも気にしない。
どんなに妨げられたって、おれはやる。
 そうだ、おれはこれから、ずっともってたあせりの先に行く。
 体はどんどん疲れていくが、
なにか別のもの満たされていく気がする。
 口は体力の限界にあえぐが、胸は期待にはじけるばかり。
 何かは知らないが、こころが感じる。
この先、このすぐ先に、
おれが求めてやまなかったものがあるんだ!
 そして、そこが、もう口と目の先に……。

 ――ああ、やった。おれはとうとう――。
「あ、サケー!」
 橋の下を見て、幼いこどもが声をあげた。
 その体を高く支える老人は、
はしゃぐこどもをまぶしく見ながら語った。
「ああ。サケたちは川から海へと出て、
長い時間をかけて体力をたくわえて大きくなると、
海からまた生まれた川へ帰ってくる。
ただ、たまごのために。そしてとりつかれたように川を上り、
次の生命をつなぐと――」
 みなもを乱す命の躍動に目を細め、おだやかな言葉。
「役目を終えて、死んでしまうんだよ」