0457
2006-05-23
ためしてRAID
 次の講義の教室に入って友達と話していると、
前のほうで話してる声が聞こえた。
「この前カネ入ったからさ、
おれのマシンもRAID組んでみたよ」
「へえ、どっち?」
「1だけ」
「へ〜」
 ちっ、と思わず舌打ち。
「どうしたの?」
「ん〜。わたしのパソコンなんて
型落ちをなんとか動く程度にしてるのに。
お金あればわたしだってRAID構築してみたい。
うう、家賃め、光熱費め、学費めぇ」

「レイドってなーに? 高いもの?」
「本体とかじゃなくて、システムの総称っていうか……。
よし、じゃあ次の授業は黒板を分担して書こう」
「え? うん」
 やたら字が汚いのに書きなぐりまくってはすぐ消すおっさん。
 一行ごとに分担してノートに書き写しながら、わたしは言った。
「これがRAIDゼロ」
「ふぇ?」

 そして次の授業。
 先生は結構大事なことをさらりと言いながら
黒板とからめるので、二人で喋りと黒板とを
分担してノートをとっていった。
 そこでわたしは言う。
「これもRAID0」
 その次の授業。黒板は全然書かずに大事なことを
口で言うだけなので、間違えがないように
二人で一緒に言葉を聞き書き。
 耳と手の疲れに負けそうになりながらわたしはつぶやいた。
「これはRAID1……」

 それにて今日の授業も終わり、
適当にご飯でも食べて帰ろうと入った食堂でチャーハンを注文。
 お皿が出てくると友達はいそいそと
わたしのほうにパセリを移住させながら、
「これはレイドなに?」
 ふにゃりと笑って訊いた。
「そんなRAIDはないっての」
 わたしはつまんでもしゃもしゃ食べた。