0516
2006-06-07
ひねちゃん
「好きなんだ。付き合ってもらえないかな」
 と。大学の構内を歩いていたら、呼び止められて言われた。
「どうしてわたしのことが好きと言えるんですか? 
何も知らないのに」
 顔くらいしか知らないその人に言うと、
「だから付き合って、知りたいと思うんじゃないか」
 何も気にしないようにさらりと言われた。
「知りもしない相手に付き合ってというのは、
どうかと思いません?」
「そうかな?」
「そうですよ。すくなくともわたしはそう思います。
気になるから付き合って好きになりたいというのならまだしも、
最初から好きだから付き合って欲しいというのは欺瞞です。
付き合ってはじめてわかる、好きじゃない部分だって
あるはずなのに」
 わたしが言うと、
「あははは、よく考えるね、そんなこと。
ひねくれてるなあ、君は」
 むっとするわたしとはうらはらに楽しそうに笑って、
「でも、そこがいい」