0526
2006-06-10
クズから一言。
「ただいまぁ〜」
 流しで夕飯の洗い物をしていたら、
玄関からバイト帰りの娘の声。
「おかあさん、ただいまっ」
 すぐに後ろにやってきて、声をかける。
「おかえり。夕飯は?」
「いい。お店でハンバーガー食べてきちゃった」
「また? あんなジャンクフード」
 引き返す娘の足音が止まり、すこし。
「ねえ、いつもおかあさん、人の命に差なんてないって
言うよね?」
 なんだろう、いきなり?
「うん、もちろん」
 こたえると、
「人の仕事に貴賎もないって言うし、食べ物には命があって、
自分が食べる前にはたくさんの人が関わるから
大事に食べなさいって言う」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、なんで?」
 つぶやくように、ぽつりと言った。
「コストだけを下げようとするお店のしわよせでこき使われて、
お客とも思えない人にも笑って頭下げて。
それでもおいしいって言ってくれる人のために、
みんなでがんばってる。そんなわたしが……
わたしたちが作ってる食べ物を、クズ呼ばわりするの?」