0537
2006-06-12
語るに落ちる
 久しぶりの愛しい休み。
今日こそはクリアしようとコントローラーを握って
テレビをつける。
「……見にくいな」
 西日でもないのに、隣のマンションの窓ガラスに反射した光が
テレビ画面に照り付けて見にくいことこの上ない。
 そこで雨戸を閉めていると、かあさんが部屋に入ってきた。

「なんで昼間から雨戸閉めるの? 
開けてれば電気もいらないのに」
「まぶしいんだよ。こんなんじゃテレビも見えないって」
「休みだってのに昼間っからゲーム? 
もっとろくなことしなさいよ」
「はーいはい。ろくでもないことばっかして悪うございましたね。
犯罪に走らないだけましだろってんだ」
 構わず閉めていると、あきらめたのか戻って行く。
 うるさいのもいなくなったし、準備も整った。
 さあ、はじめようとコントローラーを持ち直すと、

「昼間からこんなに暗く締め切ってなにやってんだ!」
 かあさんにそそのかされたのか、今度は父さんが入ってきて、
不愉快そうに言った。
「まったく、ストリップ劇場じゃあるまいし」
「――行ったの?」
 ぼそっとかあさんの低い声。

 おれはヘッドホンを装着してテレビに向かった。