かつて若者に激しい影響力を持った男がいた。
「くだらない常識には捉えられるべきではないし、
わたしは従わない」
それを盾に若者たちは傍若無人な振る舞いをし、
その発言が社会から道徳や規則を崩壊させるもととなったと
後の道徳主義をきどる人間たちは彼をなじった。
しかし、彼がその言葉の後に続けた、
「なぜならたとえ世界が混沌の中にあっても、
わたし一人でも他人を傷つけず、
共に活かしあいながら生きていくという
社会の基本を守る自信があるからだ」
という言葉は一部の学者の記憶にとどめられているのみである。