友人とふたり、おれの家で適当に遊んでいたら
彼女から電話がかかってきた。
「いまいい?」
「あ、ごめん。いま友達来てるんだ」
「……女の子?」
ぼそっと低い声で。
「ちがうよ。前話したあいつだよ」
すると、
「え、うそ! あのモデルの人?」
驚くべき喜びようで訊ねた。
「ああ、モデラーな」
「友達と一緒にそっち行っていい?」
「まあ、いいけど、なにす」
言い切る前にも電話が切れた。
「なんだって?」
横から友達。
「いや、なんか彼女が……。友達連れてこっちに来るって」
「急ぎの用なら帰ろうか?」
「いや? なんか、おまえに会いたがってるみたいだけど」
「ええ?」
そして彼女とその友達が来た。
「わあ、はじめまして」
はしゃぎながら挨拶をする二人。
どちらかといえば普通よりすこし上の顔だが、
それほどもてはやすようなものだろうか?
「モデルやってるんですよね」
言う彼女に、
「うん? モデリング?」
「ショーとか出たことあるんですよね」
「あ、うん」
めずらしい相手に気おされるように答えるあいつ。
「わあ、すごい。有名なところから声かかったりするんですか?」
「そうだね。最近はようやく断れるくらいに
仕事も入るようになったし」
「じゃあもう、ブランドものの仕事だけですか?」
「いや……そうでもないよ。稼げるってほどじゃないけど、
自分のブランドでもちょくちょくやってる」
「すごい! 服も作っちゃうんですか」
「え?」
え?
おれとあいつはどちらからということもなく立ち上がり、
彼女たちに背を向けて二人で流しの前に並んだ。
「ま、まずいぞ。あの方たち
なにか激しく勘違いしていらっしゃらないか?」
限りなく抑えた声でぼそぼそと。
「ああ、どうやらそのようだ」